■先日、TBS-TVなどの気象予報でおなじみの森田正光氏にお話を伺う機会があったので、以前から気になっていた事を聞いてみました。
『観天望気』という言葉があります。その字の通り、自然界の出来事で天気など気象条件を予想するという昔の人たちの知恵の事を言います。
 私の知っている観天望気は
夕焼けの翌日は晴れる
朝焼けの後は天気が崩れる
山に傘雲がかかると崩れる
また、特定の地域(木曽の山奥)で聞いたはなしですが
秋に朴の木 (ホオノキ)の葉っぱが裏を向いて落ちている年は、雪が深い
地面を掘ってカエルや蛇が深い場所で冬眠している年の冬は寒くなる
トンビが3回輪をかくと雨が降る
朝顔が下を向いていると雨が降る
お昼に、木こりが山に持って行った弁当箱の蓋にご飯がくっついている時は、天気が崩れる 
 などです。
 これらの先人の知恵のような事象には、科学的根拠があるものもあるでしょうが、そうでないものも多いかもしれません。そこで森田氏に、観天望気についてどう思うか伺ってみました。
 氏の結論として、『観天望気よりも現代の科学技術の水準の方が高い』ので、『観天望気はあてにしない方が良い』とのことでした。
 例として、『カマキリの卵』の話をした下さいました。
 カマキリの卵の話は、酒井與喜夫さんという先生が研究した内容で、『カマキリは木や木の葉に産卵する位置で、その地域の積雪量を正確に言い当てる』というものです。

カマキリの巣

 卵が雪に埋もれれば、卵が死んでしまい子孫を残す事が出来ない。だから雪に埋もれないぎりぎりの所に卵を産み付けるのがカマキリの知恵だ、という内容です。
 この論理展開は、『雪に埋もれた卵はすべて死んでしまう』を前提としたものですが、後に別の研究者が実験したところ、カマキリの卵は雪に埋もれても死なない、という事が判明し、氏の論理は思い込みを前提としたものだったことが分かりました。

※画像はクリックで拡大できます。
カマキリの巣

 この様に、科学的な根拠が希薄なことを『思い込み』で信じるよりは、現在の進歩した科学分析技術や観測に基づいたものの方が、はるかに信頼できる、というのが森田氏の意見でした。
 ナルホド・・・と納得です。
 カマキリが自然界から何かを感じとって卵を産んでいるとしたら、それはロマンを感じずにいられませんが、やはり科学というものは、客観的に評価できるデータをもとに論じなければいけないものだと、私も思います。