加齢とともに、腸自体の消化機能が低下することが知られています。

消化機能の低下は腸内細菌の機能低下をもたらし、腸内細菌の重要な機能である免疫力を維持する機能が低下し、これが免疫老化と呼ばれる免疫力の低下をもたらします。 免疫老化が始まると慢性炎症状態となり、それがさらに胃腸炎、ガン、糖尿病などをはじめとするメタボリックシンドロームなどに発展すると考えられています。 また、血中の炎症性サイトカイン(IL6やTNFなど)のレベルは、年齢とともに上昇傾向にあり、これらのサイトカインが様々な疾患を引き起こすことが考えられます。

この炎症性サイトカインの加齢による上昇という現象も、腸内細菌の老化に連動していると考えられています。 トシとともに消化機能が低下する・・・。トシだからしかたないから消化の良いものを食べよう、だけではすまない大変な変化が、実は老化した腸内で起こっているわけです。

実は、腸内細菌の老化はすでに証明された事実です。

近年、腸内細菌が日々作り出す短鎖脂肪酸に注目が集まっております。短鎖脂肪酸には腸内を弱酸性の環境にして有害な菌の増殖を抑制したり、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する、ヒトの免疫反応を制御するなど様々な機能があることが知られています。

この短鎖脂肪酸について、英国の研究者であるRampelliらが高齢者の糞便のメタゲノム解析を行い、加齢により変化する腸内細菌の遺伝子の変化を調べてみたところ、短鎖脂肪酸産生の生成に関連する遺伝子そのものが欠如していることを発見し、そのような遺伝子の変化が病原性桿菌の増加と相関していたことも発見しました。

加齢によって腸内細菌の中の短鎖脂肪酸産生を生成する遺伝子が欠如する、ということはすなはち、老化した腸内細菌はもはや腸内で短鎖脂肪酸などの代謝産物を生成することができない、ということになります。 このように、腸内フローラを構成する腸内細菌叢の機能や数の変化は、遺伝子レベルでの変化が引き金になっていることが判明したのです。

実際、腸内細菌の生成する産物は短鎖脂肪酸だけではなく、また短鎖脂肪酸だけが免疫の制御を行っているわけではありませんが、老化した腸内フローラはもはや、若い頃のようなヒトに有益な代謝産物を腸内菌に作らせる、遺伝子そのものが失われてしまっているということが分かったのです。 メチニコフが唱えた、ヒトの老化が腸内細菌から始まるという説が、現代の科学技術をもって遺伝子レベルで証明されたことになります。