北海道の厚岸(あっけし)で買った生牡蠣を、クール便で自宅や知人宅に送ったところ、このようなラベルが貼られて送られてきた。
滅菌(めっきん)済とあるので、何が滅菌されてるのかと見たら、(牡蠣を漬けてある)海水が紫外線で殺菌されている、と書いてあった。
さらによく見ると滅菌ではなく『減菌済み』だった。実に紛らわしい。

しかし、減菌という用語は化学の世界にはほとんど使われず、せいぜいガーゼメーカーが使っているくらいだ。
多分、紫外線ランプ(蛍光灯)をあてて海水を殺菌処理するようにしているのだろう。
滅菌と殺菌(使わない言葉だが減菌も含めて)は天と地の違いがある。滅菌は文字通りすべての菌が死滅する加熱処理などを行うことで、一般に115度から125度くらいの加熱処理が必要だ。殺菌という処理は塩素や紫外線処理を行うことで一時的に菌の数を減らしたに過ぎないので、時間が経てば菌は増殖を始め、元通りの菌数に戻る可能性が高い。

牡蠣は海水に浸かって送られてきたわけではないが、漬けられていた海水は殺菌処理をして綺麗ですよ、といいたいのだろう。いずれにせよ、殺菌した海水の中に菌だらけの生牡蠣を入れて送る意味はあまりないので、このシールは不要だ。

一般に主婦は、まな板や布巾をキッチンハイターで殺菌して綺麗になったつもりだろうが、死滅していない菌がうじゃうじゃ生き残っていることは知らないだろう。だが、そんな菌に囲まれた生活だからこそ、我々の免疫機能は常に菌とのスパーリングによって鍛えられているのだとも言える。偏屈者の思いは複雑だ。