牛乳など動物性食材を発酵させてヨーグルトやチーズを作るものは「動物性乳酸菌」で、穀類や野菜など植物性の食材を発酵させてお酒や漬け物などをつくる菌は「植物性乳酸菌」・・・などと書かれた販売資料がありますが、基本的(学術的)にこれは間違いです。

そもそも乳酸菌は、『バクテリアの中で、ブドウ糖から乳酸を50%以上の率で生産して、内成胞子を作らない非運動性の細菌グループ』の総称です。
乳酸菌は地面や葉っぱなど、どこから取ってきて分離しても乳酸菌は乳酸菌です。

動物から取ってきたので動物性乳酸菌などとは言いませんし、某メーカーKが植物性乳酸菌として飲料を販売していますが、それならば『植物由来の乳酸菌』と言うべきです。
(この件で、某腸内細菌シンポジウムで、業界では有名な理科学研究所のB先生が、某メーカーKの発表者を叱責しているのを横で聞いたことがあります)
市販のヨーグルトに使われるカゼイという菌にも、植物由来のものがありますので、別に珍しいものではありません。
あえて植物性と呼ぶのは、いかにも特殊だという印象を与えるための戦略でしょうが、消費者を惑わす宣伝方法と言われても仕方ありません。
その意味では、冒頭に書いたように『植物性素材を発酵させる菌が植物性乳酸菌』などというのは、2回間違っていることになります。

日本語の意味としては、『動物性乳酸菌』というと、動物の性質をもった乳酸菌ということになり、そんな菌は存在しません。
同様に、『動物性蛋白質』などという言い方もありますが、これも動物由来の蛋白質を称したものです。
研究者と栄養学者との間にはだいぶ隙間があるようです。