新型コロナウイルス、COVID-19感染症のパンデミックが起こり、世界中で何百万人もの感染者が出ている。集中治療室に送られ、人工呼吸器を装着する段階に至った患者の半数以上が亡くなっているとされる。
これら、亡くなった患者の多くが重症化によって生じる免疫反応の暴走(サイトカインストーム)や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)であるととされ、既存薬を転用して治療に使いながら、現在各国で開発中のCOVID-19治療薬は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、サイトカインストームなどを改善する薬剤に分けられる。

一方、ミシガン大学の医師らは、新型コロナウイルス感染症の患者を死のスパイラルに導く要因の1つである、サイトカインストームを、既存薬を使って制御する研究に着手しているそうだ。 その方法は、人工呼吸器をつけた患者に、感染への反応を引き起こす体内分子であるインターロイキン-6(IL-6)を阻害する、抗体医薬品トシリズマブを投与するというものだ。  この薬はすでにロシュから販売されているもので、ミシガン大学によると、人工呼吸器を装着した患者にIL-6阻害薬を投与した場合の死亡率は、投与しなかった場合に比べて45%低かったという。

インターロイキン-6(IL-6)と聞くと、ラクトザイムと人マクロファージを使った実験が思い浮かぶ。
元々、ラクトザイムと炎症性サイトカイン の関係を調べるために行なった実験であるが、免疫細胞であるヒトマクロファージを刺激して、炎症性サイトカインが多く惹起されるのは、ラクトザイムの様な乳酸菌の代謝産物ではなく、菌体由来成分の方である、という結論となった。
菌体由来成分とはすなはち乳酸菌の細胞膜などの菌由来の成分で、もっと言うとヨーグルトなどの乳酸菌飲料を想像してもらえばいい。
その菌体成分が増やしてくれることを期待する炎症性サイトカインとは、もともとヒトの免疫機構の一部として働き、細菌やウイルスが体に侵入した際に、それらを撃退して体を守る重要な働きをするとされてるものだ。 乳酸菌メーカーは、以下と同じ様な実験を行い、免疫力が上がることが期待されるとして、多くのヨーグルトを販売してわけだが、サイトカインストームの原因物質としてにIL6の名が上がってしまってからは、TVなどの宣伝がぱったり止んでしまった様だ。残念ながら今回のコロナウイルス渦に巻き込まれてしまった感がある。 
ではわがラクトザイムはと言うと、IL6やIL10を惹起することはなかったが、TNFαという炎症性サイトカインを増やすことが証明された。TNFαについてはあらためて記したい。
だがラクトザイムも含めてであるが、我々が行なった様なシャーレの中の細胞で行なった実験結果が、そのまま我々の体内で再現されるとは言い切れない。
また、ヒトの免疫機構で重要なのは、何か特定のサイトカインやタンパク質のレベルだけを上げる、と言う考え方ではなく、本来のレベルや働きを維持していることだと思う。
IL-6阻害薬を投与せずとも、免疫細胞中でIL6の働きを阻害する成分に心当たりはあるのだが。残念ながらコロナのおかげで今年の学会発表の機会が失われてしまい、残念だ。